胡堂は古くから商売の神様として人々に親しまれ、町の心の拠り所でした。
ただの祠ではなく、この町に生きる人々の願いを受け止めてきた存在。さまざまな思いを胸に、人々は手を合わせたことでしょう。頼惟清も、ここで子どもたちが学者になることを願ったのかもしれません。
そんな人々の思いは、町の風景や暮らし方にも表れています。
国に選ばれた特別な地区である竹原では、自分の家であっても勝手に修理することはできません。一部費用に補助が出るものの、その補助にも年ごとの上限があり、順番待ちになることもしばしば。それでも、人々は「本物」を守りながら暮らし続けています。
これまで歩いてきた道のりの中でも、町のすみずみに漂う凛とした美意識に気づいたことでしょう。落ちていないゴミ、家の前にそっと飾られた一輪の花、そのどれもが「この町を大切にしよう」という思いの表れです。
胡堂の前に立ち、ふと本町通りを振り返ってみてください。きっと、ここに暮らす人々の「本物を残す」という静かな決意が、潮風のようにあなたの心に届くはずです。