轟音とともに岩が砕け、破片が湖に落ちて波しぶきをあげる。
高さ60メートルの岩壁。そのたもとに広がる丁場湖は、石を切り出した跡に雨水が溜まって生まれた人工の湖で、最深部は地面の下、およそ80メートルのところにあります。人が130年にわたり掘り続け、無数の石を切り出してきた痕跡です。

この島で産出される花崗岩は「北木石」と呼ばれ、石に粘りがあるため、衝撃に強く壊れにくい石として知られています。古くは大坂城の正門を固める石垣にも用いられました。敵の突撃を真正面から受ける可能性のある正門。その両脇を支える要の石として、北木石が選ばれたのです。
明治になると、日本銀行本館、明治神宮の神宮橋、靖国神社の大鳥居──石造りの建造物が求められた時代に、北木石は全国へ広がっていきました。昭和30年代の最盛期には、127もの丁場が稼働していたといいます。

なぜ北木石はこれほどまでに重宝されたのでしょうか。ひとつの仮説があります。地震の多い日本では、神社の鳥居は何度も崩れ、そのたびに建て直されてきました。ところが、どんな揺れにも倒れない鳥居があった──あの石は北木島のものだ。そうした評判が広まり、北木石は揺るぎない信頼を得ていったのかもしれません。

かつて127あった丁場も、いま残るのは最後のひとつ。石だけではなく、石切りの文化を未来に受け継がねばならない──島の石工たちは、そう語ります。
※見学は、毎日12時〜13時で開催(それ以外の時間は予約制)

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