この建物は王女の住まい。世誇殿がある御内原は国王一家の生活空間であるが、時期国王となる第一王子は首里城の外にある「中城御殿」で暮らすことになっていた。
そうして首里城の外に住んでいた王子は、国王が死ぬと継世門という裏門から世誇殿へ向かう。そして、この場所で王位継承の儀式をおこなう。この建物にはそういう役割もあったといわれている。
御内原の女性の衣服はとても華やかだった。しかし、そのほとんどが自家製であった。
女官も、夫人も、王妃でさえも。暇さえあれば糸を紡いでいた。御内原のあちこちで糸を紡いだり、機織りをする女性の姿があったはずで、世誇殿もまた例外ではないだろう。
また、世誇殿の背後には「金蔵」と呼ばれる宝物庫があった。首里城の中でも奥まった場所に位置するが、どれほど大切な宝物が収められていたのだろうか。さらに、金蔵の奥にある白銀門を抜けると「寝廟殿(しんびょうでん)」と呼ばれる、国王が亡くなると遺体を一時的に安置して祀っていた場所がある。そこに敷き詰められているのは白いサンゴ。国王の墓地である「玉陵」にも白いサンゴが敷き詰められているが、これは神聖な場所である証だと考えられている。
まわりには御嶽も見られるはずだが、御内原とは単なる大奥ではなく、祭祀を司る儀礼空間でもあったのだ。