Sing on Shoe (仁和寺)by SOUND TRIP

仁和寺は、譲位(生きている間に天皇の位を譲ること)した天皇が住んでいたお寺。だから御室と言われている。そして、史上はじめて法皇が生まれたお寺でもある。法皇とは「出家された天皇」を指す言葉だが、仁和寺は創建以来、皇室出身者が「法皇」になり住職として管理してきたお寺なのだ。

ではなぜ、皇室出身者が、住職になっていたのか?
皇室に生まれたと言っても帝になれるのはたったの一人。継承争いに巻き込まれ命を狙われる方や、政争に敗れ立場を危ぶまれる方もいたという。もし命を狙われても出家してしまえば身の安全は保障される。だから身と心の平穏を願って住職となることを選ばれた方も多くいると伝えられている。仁和寺はやんごとなき方々にとって、血なまぐさい俗世を離れて安寧に暮らせる、シェルターだったのかもしれない。

一方で仁和寺は、平安時代に公家や皇室の間で流行した国風文化の発信地でもあった。国風文化とは平安時代中期に日本で栄えた文化で、この時期に日本独自の文学や建築、服装などあらゆる文化がつくられた。ひらがなが生まれたのもこの頃で、紫式部の「源氏物語」や清少納言の「枕草子」も国風文化がなくては生まれなかったものだ。

仁和寺ではたびたび歌会が開かれたり、華道の流派「御室流」が生まれたり。最先端の文化を愛して育んだ宇多法皇がお住まいになり、その法皇が見初めた文化人が集った仁和寺は、まさしく国風文化発祥の地と言えるだろう。

ここには今に受け継がれる日本文化へと流れる、風が生まれた場所と言えるかもしれない。

仁和寺でのSOUND TRIPは、「風」をテーマに二人のアーティストが実際にフィールドレコーディングをし、ここでしか聴けない音楽体験をつくった。アーティストはタブラ奏者のユザーン氏と、数多くの作曲を手掛ける蓮沼執太氏。仁和寺に吹き付ける風の音、お経の音、砂利の音、さらには水の中の音など仁和寺に存在するあらゆる音を収録。

この音楽から、仁和寺の風があなたに吹くだろうか。

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