能 もう一つの立花家が繋いできたもの

文子と和雄の時代に料亭旅館となった御花。これまでたくさんの人がここに泊まり、記憶に残る時間を過ごしてきた。旅館としての歴史は令和の今も続いている。例えばこの大広間も、夜は宿泊者だけの空間になる。静まり返った大広間で地酒を飲みながら松濤園を眺めれば、ゆっくり物思いにふけることができるだろう。季節によっては、お舟での朝食や、夜のお堀に舟を浮かべて、花火やお月見を楽しむこともできる。親しい人と過ごすひとときは、関係をさらに親密なものにするだろう。

特別な時間を味わえる、御花の夜。その中でもひときわ特別なのが、「能」の公演がある一夜だ。100畳の大広間は、畳を外すと能舞台が現れる。日本の伝統芸能で、そして神事である能も、立花家が繋いできたものの一つだ。

もともと能は戦国武将にとって、戦に荒んだ心を癒し、再び武士として奮い立つために必要不可欠な芸術だった。初代柳川藩主の宗茂は狂言を得意としていて、徳川将軍の教育係の頃には秀忠や家光にもその知識を授けたようだ。

幕末には、最後の藩主が大の能好きだったとされる。明治時代、御花には独立した能舞台があり、頻繁に能が催された。能舞台はその後取り壊されるが、現在の和館が建てられた際、この大広間に再び能舞台が作られた。そうして、立花家は能の歴史を守ってきたのだ。多くの能面や装束が残っていることからも、能がいかに愛好されていたかがうかがえる。

戦後も定期的に能は上演されていたが、平成になってしばらく途絶えていた。だが2022年、「文化を次世代に残していく」という千月香の思いで、14年ぶりに復活を遂げる。再び日の目を見ることになった舞台を復活させるため、御花の人たちは自ら床を丁寧に磨いた。その努力が、床板を艶やかに蘇らせた。

そこで執り行われる神事は、見る者を非日常の世界へと誘う。神秘的な舞台を堪能し、そのまま大広間で余韻に浸る。御花に泊まり、そんな忘れられない一夜を過ごしてみてほしい。


生きる歴史に出会う旅/Witness the Living History
柳川藩主立花邸 御花 YANAGAWA OHANA
https://youtu.be/YJqBARYVoSA

御花の能公演はこちらから
https://ohana.co.jp/pages/noh

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