寒霞渓から見える夜景には、人の営みという星あかりが瞬いています。その光の奥を覗いてみましょう。この場所に展示されているのは、寒霞渓のふもと「かんかけ通り」で暮らす少年と、その家族の物語。この島で何百年も続いている伝統行事や風習を振り返り、寒霞渓とともに生きる人たちの暮らしを想像してもらえたらと思います。

小豆島のお祭りには、島の人たちの悠久の願いが込められています。離島であるだけでなく、瀬戸内海型気候である小豆島は降水量が少なく、長年に渡って水不足に悩まされる日々がありました。だからこそ、島の人たちはお祭りによってカミカケをして、五穀豊穣を願い、神霊を招き入れ、島のあちこちに神社をつくって独自のお祭りを行ってきました。

「かんかけ通り」の町には寒霞渓から流れる川、別当川があります。その川は作物を育て、生活に無くてはならない貴重な水となります。そんな別当川では、一年のはじまりとなるお正月のあとに門松などの正月飾りを集めて燃やします。それが「とんど焼き」というお祭りです。展示されている写真の中から、アプリの次のページで表示される写真を探してみてください。


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「とんど」と呼ばれる高さ8mほどのやぐらがバチバチと音を立てて燃えています。勢いよく燃え上がる炎と、上空に立ち上る煙。その姿から、皆さんはどんなことを感じるでしょうか。

日本では古くから、火には浄化作用があると考えられてきました。とんどの火もまたありがたい炎であり、この島では、その炎でお餅や蜜柑を焼いて食べる風習があります。そのことによって、一年を健康で元気よく過すことができるという言い伝えがあるのです。

人々は、夜に瞬く炎にどんな願いをかけてきたのでしょう。写真には写らないその想いを想像してもらえたらと思います。

季節はめぐり、春になると寒霞渓にも山桜が咲きます。そして、新緑が芽生え始めるころ、田植えが始まると、地域が一体となり農作業を行っていきます。その田畑にはホタルが舞いはじめ、また季節がめぐります。

それから、夏になるとお盆がやってきます。お盆とは、ご先祖様を自宅にお迎えして供養する行事です。そのとき、とんど焼きと同じ場所、寒霞渓から湧き出た岩清水が別当川と交わる交差点で「川めし」という行事が行われます。

展示されている写真の中から、次の写真を探してみてください。


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お祭りの前日に、河原を掃除しながら石を集め、大きなかまどをつくります。当日は、そのかまどで五目ご飯を炊き、柿の葉に盛って無縁仏にお供えをしてから、家族そろって食事をします。昔は、お盆が来ると先祖の霊だけではなく、成仏できない人の霊も人里に訪れると信じられていました。そうした霊にお供えをしておもてなしをするための行事なのです。そうして、この五目ご飯を食べることで、夏バテしなくなるとも言われています。

やがて、収穫の秋になると、その年の豊作に感謝するお祭りがあります。それが秋祭りです。集落ごとに「太鼓台」と呼ばれる大きなお神輿があり、100人ほどの担ぎ手が担ぎ上げて神社に奉納します。そのとき、子どもたちは太鼓台に乗り、バチで太鼓を叩くのです。

秋祭りの写真を見かけたら、その音を想像してみてください。


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そして、またお正月がやってきます。季節は星とともにめぐり、小豆島の暮らしは続きます。しかし、同じ季節でも、同じ時はまたとしてありません。人は成長し、命をつないできます。それが当たり前ではないからこそ、カミカケをして、寒霞渓に生かされてきたのです。そうして、別当川に流れる水のように耐えず、何百年とこの島で暮らし続けてきたこと。そのこと自体が奇跡であり、それにより受け継がれてきた文化や風景が今なのかもしれません。

時の水廊、それは水のように流れる時間の写真展。もう片方の展示室では、夕暮れ時から満天の星空が広がる小豆島。宇宙が生まれて138億年。水がめぐり大地が育まれ今日も一日の夜が更けていきます。受け継がれてきた今と、宇宙の星。その悠久の時間を重ねて感じてもらえたらと思います。それでは、ゆっくりとご覧ください。


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