伏見稲荷といえば、京都の千本鳥居。その鳥居のひとつに「横浜市中央卸売市場」と書かれた鳥居があります。そして、この場所にもまた京都の伏見稲荷と同じ神様がまつられています。それは商売繁盛の神様で、鳥居は願い事が「通る」という意味から、市場で商売をする人たちに広く親しまれています。その証である石の柱には卸や仲卸の会社名がずらり。関連棟にある「内藤商店」や「さがみや」を含め、現在まで続く歴史ある会社がたくさん刻まれています。

この伏見稲荷は市場がつくられた当初からこの場所にあるといいます。では、なぜこの場所が建設地に選ばれたのでしょうか。その当時の鉄道輸送のしやすさ、都市からの近さに加えて、まわりに粉塵を巻き起こすような工場が少ないというような衛生面についても考えた結果でした。

そして、先の戦争では空襲で市場の屋根を爆弾が突き破ることもありましたが、市場の人たちは自宅が燃えるのを遠望しながら仕事を続けました。あるときには、靴底に使うために塩漬けにしていたクジラの皮を、あまりの食糧難に当時の市長が自ら試食をして「これなら食べられる」と配給に至ったという話も。そのすべてが実際にこの場所で起きた出来事なのです。

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