大地は常に動いている。プレートテクトニクス、つまり地球の表面は何枚かの岩盤=プレートで覆われていて、それらは常に移動をしてプレート同士がせめぎ合い、ぶつかり合っているという話だ。たとえば、日本の東側に太平洋プレートがあり、南側にフィリピン海プレートがある。その2つのプレートがぶつかるところに大地の境界線が存在する。その境界線の割れ目からマグマが吹き出して火山が生まれる。そのような大地の割れ目に沿って点在しているのが伊豆諸島や小笠原諸島ということになる。そして、大地は常に動いている。南側から押し寄せてくるフィリピン海プレートに乗って移動して日本列島にドッキング、くっついてしまったのが伊豆半島であると考えられている。いずれにせよ、このように2つのプレートがぶつかりあって火山が生まれる場所は世界において珍しくはない。

しかし、富士山はといえば、世界でも類を見ないほど珍しい。北側に北アメリカプレートが、南側にフィリピン海プレートが、西側にユーラシアプレートが、3つのプレートがぶつかる結合点に富士山は存在する。さらにそこを火山前線も横断していて最もマグマが噴出しやすい場所になっている。地球上にこのような特異点は富士山しかない。つまり、たまたま富士山がそこにあるのではなく、地球上でたったひとつの珍しい場所だからこそ、そこに富士山が存在するのである。

そして、フォッサマグナ。フォッサマグナとは「大きな溝」という意味で、北アメリカプレートと、ユーラシアプレートの境界線にあたる、まさに大地の割れ目である。この飛行機はそのフォッサマグナに沿ってフライトしていくことになる。南から、天城山(あまぎさん)、箱根山(はこねやま)、富士山、八ヶ岳、浅間山(あさまやま)、妙高山(みょうこうさん)と火山帯が連なり、大地の割れ目に沿ってマグマが上昇し火山が生まれることから、火山が高層ビルのように立ち並んでいるのである。そして、その恩恵として温泉地が集中しているわけだ。

この飛行機は、富士山に近づいたときに高度を落とし、富士山と同じ高さをフライトする。実際に富士山が目の前に迫ってくると圧倒されることだろう。そのとき、「宝永噴火(ほうえいふんか)」の痕を探してみてほしい。富士山の噴火としては最も新しい記録であり、最大とも言われる宝永の大噴火。噴煙は上空20kmにのぼり、噴火は約2週間続いた。火山灰は江戸の町にも届き、昼間でも蝋燭の明かりを灯さなければならなかったという。

富士山の山の形が変わったほどの大噴火、その痕は、南東斜面に見られる。登山で歩いて見ることもできるが、空から見る巨大な穴はより一層、富士山の本当の姿を教えてくれる。というのも、富士山は人間で言えば10代に例えられるほど若い火山で、5600万年前から数えると噴火した回数は180回を超える。平均すれば、30年に一度は噴火をしていたと考えられている。最後に噴火したのが、300年前の宝永噴火であるとすれば、なんと今、10回ぶんの噴火が溜まっている状態とも言えるのだ。

もしかすると、今日、空から見る富士山は今しか見られない形であり、次に見る富士山はまた違う姿をしているかもしれない。静かで美しく見える富士山は、地球規模のプレートテクトニクスの特異点に位置する生きた火山なのである。

次のガイドでは、そんな富士山に太古の日本人が見出してきた物語を聞いてほしいと思います。

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