商店街を抜けて駐車場までの道のりは平坦なのに、お城が建つところだけ急に小高い。
息切れしながら坂を登り、中腹の広場まで辿り着いた。目の前には肱川が広がっている。緩やかに見える流れの中で、鮎漁だろうか、川幅いっぱいの瀬張り竹を見回るように水の中を歩く男性。向こうでは数隻のカヌーがぷかぷか浮かんで、地元のカヌー教室なんてあるのかな、観光客かしら、とぼんやり考える。
小さなお孫さんを連れたご婦人が「今日はお城にお泊まりがありますね」と話しかけてきた。なんでも、空調のいらない春と秋にだけお城に宿泊できるらしい。お泊まりがある日には、江戸時代さながら、入城セレモニーの鉄砲の音が夕方の大洲に鳴り響く。やっとの思いで坂を登り切り、城の高台から、様々な時代の面影を残すこの町を見下ろした。


ON THE TRIP 編集部
文章:巻淵香織
写真:本間寛
 声:奈良音花

※このガイドは、取材や資料に基づいて作っていますが、ぼくたち ON THE TRIP の解釈も含まれています。専門家により諸説が異なる場合がありますが、真実は自らの旅で発見してください。


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