スサノオから剣を贈られたアマテラスは、やがてその剣を孫であるニニギに託すことになる。そうして、ニニギが剣と鏡と勾玉の三種の神器を持って地上に降り立ったことを天孫降臨という。それから時は流れ、剣は伊勢神宮に移されるのだが、その後、このような物語が伝わっている。
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ニニギの子孫にあたる天皇家が奈良のあたりで国家を築こうとしていた時代のこと。東にはまだ天皇家に従わない勢力がありました。そこで、天皇は息子であるヤマトタケルに東を討伐してくるように命じます。
ヤマトタケルは東へ向かう道すがら、叔母がいる伊勢神宮に立ち寄ります。そして、叔母から伊勢神宮で祀られていた剣を授かります。それこそが、ヤマタノオロチから生まれ、三種の神器のひとつとなった剣でした。
神聖な剣を手にしたヤマトタケルは東に進み、名古屋のあたりを通りかかったとき、ミヤズヒメという美しい娘に出会います。恋に落ちた二人でしたが、ヤマトタケルには東を討伐する責務があります。
「再び帰ってきたときに結婚しよう。」ヤマトタケルはそう約束して旅立ちます。
静岡のあたりに差し掛かったとき、ヤマトタケルは敵の騙し討ちを受け、野原で火に囲まれてしまいます。逃げ道を失ったヤマトタケルでしたが、あの神聖な剣を使って草をなぎ払って脱出、敵を焼き払うことに成功します。このことから、その剣は「草薙神剣」と呼ばれるようになりました。
それからいくつもの苦難を乗り越え、東の討伐に成功したヤマトタケルは、再びこの地に帰ってきます。そして、約束通りミヤズヒメと結ばれます。しばらくは共に暮らした二人でしたが、ヤマトタケルは南の征伐に向かうことになります。
再び離れ離れになるミヤズヒメにヤマトタケルは草薙神剣をお守りとして託しました。しかし、南に向かったヤマトタケルはそのまま命を落としてしまうのです。
この地に残されたミヤズヒメはひとり、草薙神剣を守っていたのですが、年老いて社を建てる場所を探します。そのとき、一本の楓の木が自ら火を発しました。その木はごうごうと燃え続け、やがて水田に倒れても炎は消えず、水田もなお熱かった。そのことから「熱田」と名付け、その場所に社を建てることにしました。
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これが、草薙神剣について語り継がれてきた物語。諸説があり、どれが正しいということもない。
あなたがこの物語を聞いて、熱田神宮でどんなことを感じるか。そのことを大切にしてほしい。