29段の階段を上がり
私たちは空に出会い
すべてを脱ぎ捨てる
日常を洗い流すための小舟にのり
私たちはいくだろう
かつてこの場所に築かれたひとつの国
かつてここに暮らした人々の
まなざしをたどり
数百年の時をさかのぼる
それぞれの場所は
それぞれの光と影を隠し持っていた
青い窓 明け方の乳白色
オレンジ色のマストは
大きな帆を張るだろう
繰り返すTea for Twoのメロディ
白昼夢
時間を巻き戻す角度と傾斜
祈りのための階段
神殿と沐浴
そうして小舟は静かにいくだろう
いにしえの月の明かり 木々の影を
過去と未来の川の流れを
祝福のための航路に訪れる朝
水面のきらめきと
珈琲の香りの中を
私たちはいくだろう
(船出のための沐浴)
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このガイドのナレーターは詩人・菅原敏さん。全国各地に宿泊しながらその体験を詩にする活動を行う菅原敏さんが、実際にこのホテルに宿泊することで生まれた詩を収録しています。同じ空間に宿泊しているあなたにはどんな情景が思い浮かぶでしょうか。
菅原敏/すがわら びん
http://sugawarabin.com/