LIAM FUJI ──それは、数式に誘われ迷いと温もりに身を委ねる穏やかな時間。
リアム・ギリック& MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO。ここは、現代アート作家と、日本人建築家のコラボレーションによって生まれたホテルです。建物の名前は、二人の名前をとって「リアムフジ」。
A&Aは「Artist」&「Architect」のことですが、リアムフジには、もうひとつのAがあります。それは、「Academic」。ホテルの外観にも見られる方程式は、真鍋淑郎という気象学者によるものです。真鍋氏は世界で初めて、CO2濃度が2倍になると地球の温度が約2度上がることを計算式で明らかにし、ノーベル賞を受賞した人物。
アーティストのリアムが、パリで行われた地球温暖化会議のためのメッセージポスターを担当し、その際に彼の方程式に魅せられたことで、デザインに組み込まれました。あらためて、このホテルの館内を見回してみてください。館内のあちこちに彼の方程式が散りばめられています。
また、このホテルは、自分がどこにいるのかを見失うほど入り組んだ建築となり、迷路のようになっています。
ホテルに足を踏み入れたあなたにとって、最初の1時間は落ち着かないかもしれません。しかし、時間が経つにつれて各空間の使い勝手や楽しさがわかり、異なるメッセージを発信していることに気づくでしょう。また、使い方があえて設計されてない空間にも気づくことでしょう。
そうして、あなた自身が迷いながら考える。各部屋の使い方や、その背後にある意図を考えること。それこそがリアム・ギリックが大切にする「関係性の美学」です。
これは、建築とアートだけでは未完成であり、鑑賞者が加わり、作品を一緒につくっていくという考え方です。つまりはそう、あなたはすでにこの作品に参加しているのです。