館内の外に出て散歩道を散策してみましょう。そこには薄川が流れています。この川にはイワナやヤマメはもちろん、カジカやサンショウウオも生息していて、天然の水族館のようです。
そんな薄川の水は雨水ではなく、天から授かった水であると伝えられています。そのため、古代より村人たちはこの川の水で身をすすぐことで禊とし、神社にお参りをする習わしがありました。
明神館のまわりには松本市内にある様々な神社の奥社があります。そのひとつに薄宮神社の奥社があるわけですが、その神様はここからススキの舟に乗り、川の流れに身を委ねて松本市内に降りていきました。そうして降り立った場所にもうひとつの薄宮神社(須々岐水神社)があります。松本は蕎麦が有名ですが、蕎麦というのはもともと水が少ない土地でお米の代わりに育てるものです。それだけ水は貴重なものでした。薄宮神社はその大切な水を守ってきた神様でもあるのです。
今の里山をつくっているのは、山や渓谷から流れる豊かな水です。それによって田畑が潤い、宗教や文化が発達してきました。その水の源がこの場所にあるのです。だからこそ、この場所には様々な神様がいて、奥社があるのです。そして、龍神様がいると言われる場所に温泉が湧き、神様たちが湯治に訪れると言われています。そのすべてはつながっているのです。
ここから上には民家もなにもありません。そのため、水道も通っていません。明神館の蛇口から出てくるのはピュアな山の水。明神館の料理に使う水も同じです。国定公園の中にある明神館は本来は開発してはいけない場所。しかし、偶然にも国定公園に指定される前から明神館があったことから、奇跡的にこの場所にあり続けています。だからこそ、明神館はすべての里山の水の源とも言えるこの場所を守り続けているのかもしれません。
※このガイドは、取材や資料に基づいて作っていますが、ぼくたち ON THE TRIP の解釈も含まれています。専門家により諸説が異なる場合がありますが、真実は自らの旅で発見してください。