ー自己紹介お願いします。

谷澤:美術作家の谷澤紗和子です。「妄想力の解放」や「女性像」をテーマにした作品を制作しています。また、女性に対する固定的な社会的評価を問い直す作品にも取り組んでいます。
インスタレーション、作陶、切り紙、絵画など、いくつかの表現手法を横断、交差させながら、作品制作を行っています。

藤野:小説家の藤野可織です。おもに純文学の文芸誌に小説やエッセイを書いています。私たちのユニット名のもととなった『青木きららのちょっとした冒険』のほか、何冊か本が出ています。

ー鑑賞者にどこを特に見て欲しいですか。

藤野:私は今回、谷澤さんに、いわゆる女性像として期待されるのとはちがう姿をつくってほしいとお願いしました。これらの顔と見つめ合ってもらいたいなと思っています。みなさんがそれぞれ自分でイメージする自分の姿の幅がものすごく広がるのではないかと思います。

ー本作品の制作に至った理由、経緯を教えてください。

谷澤:藤野さんとのコラボレーションは今回で四度目になりました。これまでユニット名を決めることなく活動してきましたが、藤野さんのご著作「青木きららのちょっとした冒険」を読んで、複数の物語に登場する青木きららの現れ方に感銘を受けました。
「あちこちに現れて 誰かであり 誰でもない 名前のない私たちみんなが
「きらら」として生き抜いている」という紹介文を読み、だったら私たちも「青木きらら」だよな。と思って藤野さんにユニット名として提案しました。今作では小説に出てくる「青木きらら」を軸に作品を制作しています。

ー作品を通じて伝えたいことはありますか。

藤野:小説の方を書いたときと同じで、とにかくみんなでなんとか生き延びていこうと、ただそれだけです。この社会には、個人の努力や気の持ちようではどうにもならない、動かしがたい壁があります。それを取り払うための答えも解決も得られていないのですが、同じ時間の中でばらばらに生きている私たちの、お互いの存在をたしかめたいという気持ちがあります。

ー制作の上でのこだわり、工夫点を教えてください。

谷澤:「誰かであり、誰でもある。」という青木きららの存在を、お面に置き換えて制作しました。それぞれのお面のパーツを型紙としても使用し、それぞれのお面にステンシルプリントしています。
お面のパーツを制作する際には、女性を表す時に使われがちな記号的表象を出来るだけ使わないように考えました。1人またはたくさんのきららたちの存在を暗喩するような存在のお面にしたいと考えました。

ー藤野さんに質問なのですが、小説作品がまた別の美術作品となることにについてどうお考えですか。

藤野: 私はもともと 美術がとても好きなので、このような形で美術に関わることができて本当に嬉しいです。美術は多くの場合 小説を読むよりも短い時間で見ることができます。それでも見た人の記憶に長く定着し、その人の心になじんでいくものだと思っています。私が小説として書いてきたものが美術のやり方で届くことを 奇跡のように思っています。

青木きらら
《わたしたち生きてますのでどうかご心配なく》
2024
紙にアクリル絵具、リボン、カッティングシート

美術・アートディレクション:谷澤紗和子
小説:藤野可織
グラフィックデザイン:YUKA IWAKI

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