どちらかひとつの作品しか見ることができないことになりますが、男性大浴場には江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」をモチーフにした作品があります。日本の銭湯では富士山がよく描かれているのですが、それは大正時代の東京の銭湯に絵を描いてほしいと頼まれた画家が、自分の生まれ故郷の富士山を描いたことがきっかけです。そのことによって、壁の絵と銭湯の湯船がつながっているかのように見えて、富士山に清められた水に浸かり、罪や穢れをおとす禊になると評判になりました。

一方、女性大浴場にはモネの睡蓮をモチーフにした作品が描かれています。この作品もまた蓮の花が浮かぶ湖面と湯船がつながっているかのように見えます。日本人にも馴染み深いモネは葛飾北斎の浮世絵に影響を受けたともいわれていますが、富士山の力強さとは対照的な華やかさが感じられることでしょう。

今でも東京のあちこちに昔ながらの銭湯が残されています。その壁にはどんな絵画が描かれているのでしょうか。時間があれば、銭湯をめぐる旅もお試しください。

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