小さなことに感謝して美しさを見出すこと

日本には春、夏、秋、冬の四季がありますが、4つの季節をさらに小さく分けた、七十二候という暦があるのをご存知でしょうか。

1年を72に区切ると、5日に1度季節が変わることになります。

日本人は古くから季節の移ろいを敏感に感じ取り、新しい季節の訪れを祝福しながら生きてきました。

青葉が茂り、蕾がつき、花が咲いたら枯れて散っていく。

けれど、枯れて終わりではありません。
私たちは、枯れて散った葉にも味わい深さやはかなさを見出し、「落ち葉」として愛でます。
このように、日本人があらゆることに美しさを見出す感性を持っているのはなぜでしょうか。

それは、あらゆるものにいのちがあると考えているからです。

日本には古来よりアニミズムが根付いており、石にも、木にも、川にも、季節にさえ固有のいのちが宿ると考えます。

特定の宗教を信じているわけではなくても、神社の御神木に自然と手を合わせたり、家を建てる前に地鎮祭をして土地の神様に安全を祈願したりします。

この考えは食にも現れます。
私たちは、食べる前に「いただきます」と言います。
お米一粒にも特別ないのちが宿り、そのいのちを頂戴することで私たちは生きていけるという、食物への感謝と畏怖の念が表れている言葉なのです。

関西では「おまめさん」のように食べ物にさんをつける風習が残っていますが、これも目の前の小さな存在に命を感じ、愛情や尊敬を表現しているといえるでしょう。

茶の湯の精神も同様で、一つひとつの出会いに感謝し、たった一杯のお茶を通じて目の前の方をもてなすことに全身全霊をつぎ込みます。その心得を表した言葉が「一期一会」です。

さて、今日ここにいらしてくれたこともまた、一期一会。ここからは、日本人が静かにあたためてきた、わたしたちの感じる美を映像で体験してください。

Next Contents

Select language