ここは、天理大学附属の図書館です。ですが、15歳以上であれば、誰でも入ることができ、資料を自由にめくることができます。

目の前の石碑は、石上神宮にゆかりのある石上宅嗣(いそのかみのやかつぐ)の顕彰碑。彼は奈良時代、日本で最初の公開図書館「芸亭(うんてい)」を開き、学びの場を人々にひらきました。この図書館もまた、その精神を引き継ぎ、誰にでも開かれた学びの場となっています。

150万冊を超える蔵書は、学生ひとりあたりに換算すれば日本一ともいわれ、国宝、重要文化財を合わせて90点余りを所蔵。収集・保存・研究を重ねながら、貴重な資料を未来へとつないでいます。

図書館の開館は、昭和5年。天理外国語学校の流れを汲み、海外伝道のための語学や文化資料を集めたのがきっかけでした。戦後には、海外に流出しかけた国内の古典や古文書も集め、いまでは日本文化の宝庫ともいえる場所になっています。

館内は、時を超えて静かな風格をたたえています。洋風建築のホールには、開館当初のシャンデリアや大理石のカウンターがそのまま残り、閲覧室では、読書に集中できるよう高い位置に窓が設けられ、厚い二重窓が静けさを守っています。

旅の締めくくりに、ぜひ手に取ってみてください。

たとえば、『大和名所図会 四巻』──江戸時代の人々が記した、奈良のガイドブックです。石上神宮や内山永久寺、かつての風景が、繊細な筆致で描かれています。もし文字が読みにくければ、参考書も用意されていますので、スタッフの方に気軽に尋ねてみてください。

旅で歩いた場所を、古い絵図とともにもう一度たどる。絵の中の人々もまた、私たちと同じように、祈りの道を歩いています。かつての旅人のまなざしと、自分の記憶とが、そっと重なっていく感覚。それは、時を越えてもう一度この旅を味わう、静かな旅の続きなのかもしれません。

※館内は撮影・録音禁止です。静かな空間を守るため、ご配慮をお願いいたします。

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