この旅の途中に、石の物語をひとつに束ねる場所があります。それが日本遺産センターです。
館内では、採石から運搬、そして城郭や近代建築へ──石が歩んできた道をパネルや映像でたどることができます。ここで全体像を見渡せば、これから出会う風景が一層深く見えてくるでしょう。本を閉じるように展示を後にしたら、現場へ。本物は外にあります。

センターが建つ福田の町は、今も現役の石の町。五つの石材会社が軒を連ね、同じ小豆島の石を扱いながら、それぞれに独自の技を磨いています。展示室に置かれた五つの展示台は、その多彩な個性を象徴するかのようです。

この建物はもともと小学校でした。校舎の外を見渡せば、随所に小豆島の石が使われ、正面には石を切り出していた山がそびえます。子どもたちは石を削る音を聞きながら育ったのです。

校庭の一角には、大坂城の石垣をどう切り出し、どう運び、どう積み上げたのかを実験するために使われた巨大な石が残されています。その挑戦を担ったのは、古の技を受け継ぐ現代の石工たちでした。こうして福田には、教科書では学べない「本物の技術」が息づいています。だからこそ、今もなお各地から石工たちが学びに訪れるのです。

日本遺産センターは、この旅の地図を手に入れる場所。ここを出発点にすれば、石の物語が一本の道となって、あなたの旅のなかに浮かび上がってくるはずです。


※日本遺産とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを認定する制度です。

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