大坂城に運ばれるはずだった──けれど、船に積まれることのなかった石たちが、いまも整然と並び、静かに時を刻んでいます。

どれも山から切り出され、形を整えられ、すぐにでも石垣に使えそうなものばかり。なぜ大坂へ運ばれなかったのかは分かっていません。しかし、未完のまま残されたその姿こそ、築城の途中をそのまま映す貴重な証となっています。

なぜ小豆島をはじめ瀬戸内の島々から石が切り出されたのか。理由は海にありました。船で運べることが何よりの条件で、丁場もまた海へ下ろしやすい場所が選ばれました。ここに並ぶ石は、その流れを物語る証人なのです。

園内には、石を積み出す際に使われた道具が展示され、かつての作業風景を思い起こさせます。また石割り体験では、矢穴にくさびを打ち込む感覚を実際に味わうことができます。石の重さや硬さ、そして「石の目」。その感覚に触れることで、石をただ眺めるだけでは気づけなかった視点が開かれるはず。その経験は、いつか大坂城の石垣を目にしたとき、そのひとつひとつの石を見る目を変えてくれることでしょう。

そしてもうひとつ。全国の山頂にある三角点。その石材の多くは小豆島小海(おみ)地区産です。もしどこかの山で三角点を見つけたなら、この旅で出会った石の記憶を思い出してください。小豆島の石は、いまも静かに、遠い場所でその存在を刻み続けています。

Next Contents

Select language