「世界の洞窟の内部は、どこも同じように見える。」台湾人の作者は、佐渡の鉱洞に入り、そんな気づきを得ました。どの洞窟も、深部へ進むほど場所の違いが曖昧になっていく。その「似ている」という感覚こそが、国や土地を越えて人と人の記憶を結びつける「縁路」になり得るのではないか──それが、この作品の出発点です。

この空間は、佐渡と九份をつなぐ架空の「鉱脈の通路」です。二つの入口は、それぞれ日本と台湾の金鉱へとつながり、かつて金が眠っていた場所が、いまは「人情の光」を宿す場としてひらかれています。それを示すのが、作者が台湾と日本の人々との対話を通じて制作した蛍光コラージュです。

金鉱はかつて採掘され、運ばれ、持ち去られました。残されたのは鉱石ではなく、人々です。人は記憶の道を通じて、世界のどこへでも行き、誰とでも出会い、未来と共感することができます。洞窟は単なる空間ではなく、通路であり、心の反響であり、人と人を結ぶ絆でもあるのです。

暗闇に沈んでいた光をすくい上げ、未来へと手渡すように輝くこの作品。どうぞ、この通路を歩きながら、あなた自身の中に眠る「縁路」を感じてみてください。

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