ここは、中川政七商店の奈良本店。
日本の工芸を生かした暮らしの道具が、およそ3000点。
並んでいるのは、オリジナル商品と奈良の作家ものです。
その象徴のひとつが「かや織ふきん」。
もともと奈良は、蚊帳の一大産地でした。
けれど、網戸やクーラーの普及とともに、蚊帳の需要は減っていきます。
「なんとか地元のものを活かせないか。」
そうして生まれたのが、蚊帳の生地でつくる、ふきんでした。
蚊帳は、風を通して蚊をよけるための布。
織り目は粗く、軽やかで、空気をよく通します。
そのままの構造で、ふきんにしてみると、
たたんだときにはしっかり水を吸い、広げれば、すっと乾いていく。
昔からある素材を、いまの暮らしへ。
振り返ってみると、この建物でお話してきた出来事には、
どこか共通点があります。
時代に合わせて、新しいことに挑戦すること。
そして、変わり続けること。
奈良晒の商いから始まったこの店も、
三百年のあいだに、さまざまな時代をくぐり抜けてきました。
いま中川政七商店が取り組んでいるのは、
日本の工芸を、未来へつないでいくこと。
この奈良本店には、
その思いから生まれた、たくさんの暮らしの道具が並んでいます。
もしよろしければ、
ひとつ手に取ってみてください。
あるいは、茶論で抹茶をいただきながら、
ここで、ゆっくり一服するのもよいかもしれません。
この場所には、三百年のあいだに積み重なってきた、
まだ誰にも見えていない時間が流れています。
七頭の鹿からはじまった物語は、
まだこの建物のどこかで続いているのかもしれません。
※このガイドは、取材や資料に基づいて作成していますが、ON THE TRIP の解釈も含まれています。諸説ある部分もありますが、真実は、あなた自身の体験の中で見つけてください。
ON THE TRIP 編集部
声:奈良音花・五十嵐優樹