火を見つめてみてください。
炎を眺めていると、時間の感覚が少しずつ溶けていきます。この不思議な心地よさには、理由があるといわれます。
炎の揺らめきには「1/fゆらぎ」と呼ばれるリズムがあります。規則的すぎず、不規則すぎない。その絶妙なゆらぎは、波の音や川のせせらぎ、木漏れ日など、自然の中に多く存在しています。
そして、人の心拍のリズムにも、1/fに近いゆらぎが見られると言われています。自然のゆらぎと、私たちの体が持つリズム。その二つがどこか響き合うことで、人は心地よさを感じるのかもしれません。
そして、火にはもうひとつ、不思議な力があります。
人類が火を囲むようになって、およそ百万年。火があったから、夜でも人は集まり、語り合い、物語を紡いできました。焚き火は、人類にとって最も古い団らんの風景なのです。
テレビやスマートフォンは、次々と新しい情報を運んできます。でも、炎は何も教えてくれません。それでも、私たちはいつまでも眺めていられます。
それはきっと、火を囲む時間を、私たちが百万年ものあいだ繰り返してきたから。その記憶を、私たちの体は、いまもどこかで覚えているのかもしれません。
今夜は、ただ火を見つめてみてください。今日、抱えてきたものが、炎とともに、ゆっくり流れていくかもしれません。

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