江戸時代、登山者たちは「山役銭」という入山料のようなものを支払う必要があった。多くの人たちは金鳥居の手前にあった受付で料金を支払い、通行証のような手形を受け取った。しかし、別の入口から山に入る人もいる。その場合は山中に設けられた役場で料金を支払う必要があった。そのひとつが「金剛杖役場」であった。

料金には「金剛杖」の代金が含まれていて、富士講の人たちはここで金剛杖を受け取った。ここからさらに道が険しくなるので、このあたりから杖をついて登りはじめたのである。

金剛杖は現在も五合目などで売られているが、古くは登山に使用した杖の影を井戸水に映して、その水を病人に与えると回復すると信じられていた。まるで魔法使いのような話だが、富士山に登ることができた幸運な人たちは、こうして地元の人たちに幸せを分け与えていたのだろう。

次の絵図では、小屋の左側に大量の杖が並んでいる様子が見てとれる。

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