往生極楽院:極楽を再現した小さなお堂

有清園の奥に向かうと、そこは往生極楽院。作家、井上靖氏が「東洋の宝石箱」と例えたお堂に入ると、まず目に見えてくるのは大きな3体の仏像だ。中央が阿弥陀如来、向かって右側が観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)で、左側が勢至菩薩(せいしぼさつ)。これら3体は阿弥陀三尊と呼ばれている。

阿弥陀三尊とは、浄土信仰の中で特に崇拝されている仏様のこと。阿弥陀如来はこの世に生きるすべての人々を救うと誓った仏様で、生きとし生ける者を極楽浄土に導いてくれる。

浄土信仰は平安時代中期から世間に広まり、平安時代後期になると、宇治の平等院や大原の往生極楽院など浄土美術の華を咲かせた。

往生極楽院の観世音菩薩と勢至菩薩は大和座りという正座のような座り方をしている。大和座りをしている仏像はあまり例がなく、とても珍しいものだと言える。この仏像を見ると少し背を倒し、斜め下を見ているのが分かるだろうか? これは、仏の前で祈る人々に意識を向けている姿勢だと伝えられている。

往生極楽院の天井を見ると真っ黒に汚れているが、灯篭の油煙や江戸時代に行われた護摩祈祷のススがこびりついたもの。天井には様々な菩薩や天人が描かれ、阿弥陀三尊とともに浄土からのお迎えの様子を表している。この天井画は後述する資料館、円融蔵で再現図を見ることができるので、忘れずに足を運んでみよう。

Select language