あとがき

「人生は旅に似ている」と誰が最初に話したのか、いつ頃から言われているのかははっきりしないが、的を得た言葉だと思えないだろうか。

旅と同様に、生きていると思いもよらない出来事が起き、自分の思い通りに行く時があれば、風雨に阻まれるようにままならないことが起きる時もある。

旅に疲れた時は休息が必要だ。そんな時に人は宿をとり疲れを癒す。大原に流れ着いた人々にとって往生極楽院は心の拠り所になり、命という旅路の休息地になっていたのだろう。

このような休息地は、実はあなたの心の中にあることをご存知だろうか?

仏教では、どのような人や生き物でも「仏陀(ブッダ 悟りを開いたもの)」となる可能性を持っており、その可能性を「仏性(ぶっしょう)」と呼ぶ。その仏性に気づくための方法が仏教だという。

安住の地(あるいは極楽浄土)はすでにあなたの心の中に存在する。「幸せの青い鳥」の逸話のように案外すぐ近くにあるものなのだ。

より暮らしやすい場所を求め、人は移動を繰り返してきた。もしかしたら、あなたもまた探し物の途中かもしれない。けれども求めていたものはすでに心の中にあることを忘れないで欲しい。どこかでお寺を見かけたら、このことを思い出していただけたらありがたい。

ON THE TRIP 編集部
文章:鈴木雅矩
写真:本間寛
声:伊藤あすか
協力:宮下浩一 酒井健次

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