この原稿は2020年3月20日に更新した。それまでは次のような言葉をあとがきに添えていた。
──首里城の復元は未完成である。ただし、完成間近でもある。あなたが次に訪れるときには完成形が見られるかもしれない。
現在の首里城をめぐる旅は、世界遺産に登録された「首里城跡」を目の当たりにする瞬間がクライマックスかもしれない。が、首里城跡がなぜ世界遺産に登録されたのかを思い出してほしい。「琉球王国のグスク及び関連遺産群」つまり、首里城が神様が宿るグスクであり、現在に続く信仰の場であるからだ。
想像してほしい。首里城が完成したあかつきには、その果てに「東のアザナ」に辿り着く。アザナとは展望台のことであり、首里城の東端にして最も高い場所にあたる。そこから何が見えるのか。すべてのはじまりの地である神の島「久高島」。そして、海の彼方の神の世界「ニライカナイ」である。もしかすると、そこから見える風景こそがクライマックスにふさわしいのかもしれない。
首里城が完成するまで、このガイドもまた未完である──
そして、現在。再建中の首里城においては、このガイドはアーカイブとして存在していることになる。いまは同じルートで首里城を旅することはできないかもしれないが、このガイドの写真と音声、文章によってバーチャルトリップを楽しんでほしい。
そして、いつの日か再建を終えたとき、このガイドが再び日の目を浴びることを願っている。
ON THE TRIP 編集部
文章:志賀章人
写真:本間寛
声:諸見里杉子
参考資料
首里城物語/真栄平房敬
テンペスト/池上永一
知れば知るほどおもしろい 琉球王朝のすべて/上里隆史 喜納大作
首里城の復元/首里城公園友の会
※このガイドは、取材や資料に基づいて作っていますが、ぼくたち ON THE TRIP の解釈も含まれています。専門家により諸説が異なる場合がありますが、真実は自らの旅で発見してください。