この建物はどこまで続いているのだろう。天まで伸びているような錯覚を感じたかもしれない。建築家はその「戸惑い」を大切にしているという。「なんの建物だろう?」という疑問が湧いて、その答えを知りたくなるような出会いのことだ。この建物の場合、魚眼レンズで見ているかのような独特の形によって、何階建てなのかわからないような驚きがある。

立地を考えてみてほしい。大型のテナントビルが建ち並ぶメインストリート。そこから裏道に入ったこの通りには住宅街が広がっている。住宅街の合間に小さなテナントが隠されていたりもするが、それに気づかない場合も多い。しかし、この建物はどうだろう。テナントビルか、アパートか。どちらでもないようであり、その正体を確かめたくなる。

建物の表情もユニークだ。窓らしくないその形はコンクリートの重さを感じさせないだけでなく、窓から差し込む光を全身で浴びてみたくなる。建物を見ながら想像してほしい。とくに最上階はさぞかし気持ちがよさそうだ。


写真:Daici Ano

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