安藤忠雄といえばコンクリート。硬くて重いはずの打ち放しコンクリートを、なめらかで軽いベルベットのように感じさせる手腕は世界中の建築家の憧れの的。そしてもうひとつ、地下をうまく使うことでも知られている。

この建物で行われる展覧会はどれも評判が高い。これはキュレーターの手腕によるもので、建築の地下空間を活かした展示方法も注目に価する。大きな空間から小さな空間へ、そしてまた大きな空間に出たかと思えば、最後にたどりつく中庭までも展示空間になっていたりする。ひとつひとつの空間の密度が高く、それぞれに個性があるのだ。一般的に美術館という場所は、均等にスペースが並んでいるだけのスクエアな空間であることが多い。それに往々にして大きすぎる。テーマが分かれていても並列に並んでいるようにしか感じなかったりするのとは対照的である。

地上に見える屋根は鉄板を軽く折っただけ、ただ置いてあるだけのようなシャープな表現。近づいて見ると驚くほど薄い。重たいコンクリートを軽く見せる魔法はこういうところにあるのだろう。それだけではない。この屋根はミッドタウンの展望台から見られることも計算にいれられている。時間があれば、ぜひ上からも眺めてみてほしい。


写真:Masaya Yoshimura

Next Contents

Select language