果たして、この沢にいるサワガニは何色だろうか? 「サワガニといえば赤色」と考えていたぼくたちにとっては驚きだった。

「青色」なのである。

「一体、なぜだろう?」誰もがそんな疑問を抱くはずだ。そして、「そのままにしてしまう」はずだ。

しかし、この場所を案内してくれたコーチは、この小さな「なぜ?」を自分の足で問いつめた。

ここに流れる川の名前は「上八川川(かみやかわがわ)」。コーチはまず、ここからさらに下流の沢でサワガニを探してみた。すると、またしても青色だった。しかし、ある地点まで降りると赤色のサワガニが見つかった。なぜなのだろう?

そこで、仁淀川にある14の支流でサワガニの色を調査した。すると、同じ仁淀川でもやはり場所によってサワガニの色は違っていた。なぜだろう?

もしかすると、標高の高さ=水温によって色が変化するのかもしれない。たしかに標高600mの程野をはじめ、標高が高い場所では多くの青いサワガニが見つかった。しかし、それより標高が高い地芳川でも赤いサワガニが見つかっていた。なぜだろう?

標高ではないとすれば地質が関係しているのかもしれない。高知は大きく3つの地質帯に分けられる。マッピングした地図にそれを重ねあわせてみると……

なんと、青いサワガニは「三波川変成帯」に集中していたのである。赤いサワガニがいた地芳川は標高は高いが「秩父帯」に属する。見れば見るほど地質に沿って赤と青が分かれているではないか! そしてコーチは三波川変成帯に広がる吉野川を調査した。すると、やはりいたのである。青いサワガニが!

そして、確信をもって物部川にいく。三波川変成帯ではないから「赤色」に違いない!……しかし、「青色」だったのである。なぜだろう?

これは四国の川をぜんぶ調べてみなくてはならない。コーチは調査を重ねつつ、新聞にそのことを投稿してみた。すると、大学で遺伝子を研究している教授から声がかかった。さっそく遺伝子を調べてみると、これが難しい結論だった。サワガニの色と遺伝子が一致しないのだ。つまり、同じ青でも遺伝子が違ったり、赤と青で同じ遺伝子を持つサワガニもいたのである。

調査は行き詰まった。それでも遺伝子の系統図とそれぞれの川を紐付けてみると、物部川と国分川の上流に同じ遺伝子を持つ青いサワガニがいた。そして、またある場所には「ガニ越え」という地名が残されていた。「そうか」とコーチは気づいた。

サワガニは長い歴史でみれば移動する。目の前のサワガニの子孫が1万年後も同じ沢にいるかどうかはわからない。つまり、1万年前はどうだったかわからないということだ。

コーチはここで調査を止めることにした。そして、これまでの調査結果を本にまとめた。その本は帯屋町にある「金高堂」に並んでいる。

さて、これまで「コーチは」という主語を使ってきたが、コーチは専門家ではない。素人であるにもかかわらず、ふと見つけた「サワガニはなぜ青いのか?」という疑問から、ここまで辿り着いた。もちろん「ひとりで」じゃない。さまざまな得意分野を持つ仲間とともに本気で遊んだフィールドワークであった。

今回のサワガニ探しは柳野と程野を例にあげたが、サワガニはどこにでもいる。おそらく、あなたの故郷の川にも。ぜひ、あなたはあなたのフィールドワークをはじめてほしい。

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