安居渓谷をさらに奥へと進んでいくと、雨ヶ森登山道の入口がある。

昔は「お別れ遠足」といって中学を卒業する前にみんなでこの登山道を登っていた時代があった。8合目に差し掛かるころには、毎年決まって子どもたちが泣き出すらしく、お別れの寂しさが募ってというよりは、単にそれほど厳しい登山道であるのかもしれない。

しかし、こんな話もある。今はもう廃校になってしまったが、昔は雨ヶ森という山を挟んで「樫山小学校」と「椿山小学校」があった。その樫山小学校の男の先生と、椿山小学校の女の先生が恋仲になったようで、男の先生は夕方5時に学校が終わると、山を越えて椿山の女の先生に会いに行き、毎朝、きちんと樫山に戻って来たそうな。

お別れ遠足で頂上まで歩いても2時間。椿山側の集落があるところまで行くとなると、往復で6時間はかかる。道路も車も普及していないような時代の話である。ふたりの愛には標高1,390mの雨ヶ森など壁にもならなかったのだろうか。

ちなみに、そのふたりが結婚したかどうかは確認できてないそうだ(笑)

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