「どうすれば、本間さんみたいに撮れますか?」

そう聞いてみたことがある。本間さんは、シンプルにこう言った。

「まずは自分がどんな写真が好きなのかを知ることから。それって、ぼうっと考えてもわからない。ほかの人の写真を、それも自分が好きだと思う写真家の作品をたくさん見ることが大事だと思う」

ぼくは、本間さんの写真が好きだ。いつか本間さんのように撮れたらと憧れている。その意味では、本間さんの写真を浴びるように見てきたぼくは、とても贅沢な数年間を過ごしてきたことになる。

ON THE TRIP では、まず、ぼくが取材をしてガイドの文章を書きあげる。そして、実際に現地で本間さんをガイドしながら撮影を進める。その後、本間さんから大量の写真が送られてくるのだが、そこからガイドにあう写真をセレクトしていく。そのとき、である。

同じものを見ていたにも関わらず、本間さんの目にはこんなふうに見えていたのかと驚かされるのだ。そして、ファイルの中身を順に見ていくと、本間さんはひとつのスポットを撮るにも色んな視点からトライをしていて、最終的に「この視点だな」と決めたのか、ある場所に戻って同じ視点の写真が続いたりする。

つまり「セレクトする」という作業は、本間さんの視点をトレースするような、ぼくだけの贅沢なルーティンなのである。

そうして数年が経ったある日、ぼくは自分の写真が上達していることに気づいた。本間さんの大量の写真を浴びるように見てきたことで、写真を見る目が養われたのだろう。それと同時に、ほんまさんの視点がほんの少しだけ乗り移ってきたような気がするのだ。

それは、宮古島の潮の香りほどわずかな「ほんの少し」であるのだが、この宮古島のガイドにささやかなイタズラを仕掛けておいた。実は、あるスポットに、ぼくが撮影した写真を忍ばせたのだ。はたして、どの写真なのか。賢明なあなたにはすでにバレていることだろう。









文章:志賀章人
写真:本間寛

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