作庭家との対話を楽しむ

庭には意思が必要だ。何をどのように、どのタイミングで見せるか。それだけで景色はガラリと変わる。一方で、その意思をズバリと見せては興ざめるし、植物は人の意思に寄り添ってはくれない。施主がこれこれこういうものを作りたいと思っても、植物には植物の意思があり、あらぬ方向に枝が伸びてしまうこともある。そうした個性を受け入れて適材適所で配置し、時に作為を隠しながら表現していく庭師の技術は、とても高度な芸術だ。人と自然がお互いを受け入れなければ、成り立たない表現なのだから。

このガイドではそうした庭の見所を随所で伝えることを試みた。またどこかで庭を見る時があれば、このガイドを思い出し、作庭した人物や、それを育む庭師の意思を汲み取って欲しい。そこで何を見せたかったのか? じっくりと対話すれば、おのずと伝わるものがあるはずだ。

良い庭であればあるほど、きっとその見え方は受け取り手の状況(時間や季節、天気、あるいはあなたの感情)次第で変わっていくはずだ。今日の庭は、あなたにはどう写るだろうか?

ON THE TRIP 編集部
写真:本間寛
編集協力:鈴木雅矩
ナレーション:守矢光秀

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