常在寺は、土岐家の守護代・斎藤家の妙椿殿が宝徳2年(1450年)に建立した寺だ。もともとは臨済宗の僧侶であった道三様の父上は、同じ宗派のこの寺を美濃制覇の足がかりとした。道三様の代からは斎藤家の菩提寺となっている。

道三様と義龍様。父と子で殺し合いをしなければならなかった二人の肖像が、今では並んで弔われている。道三様の肖像は、娘の濃姫こと帰蝶が寄進した。義龍様の肖像は、その子息の龍興が寄進したそうだ。

蝮と呼ばれた道三様だが、もしこの地に道三様が現れなければ、美濃はどうなっていただろうか。経済発展の基盤も薄く、戦略も乏しく、早くも織田信長様の父上、信秀様の代に侵略を許していたかもしれない。美濃を丸飲みにした道三様が、実はこの美濃の救世主であったとも言えるのかもしれない。

しかし、何か納得のいかないものが、私の胸中を渦巻いている。戦略も経済も、鉄砲の技さえも、私にたたき込んでくれたのは道三様だ。だが、その道三様の下についた私は、自らの手で我が土岐氏を葬り去ってしまったのではないか?


【解説】「絹本著色斎藤道三像」「絹本著色斎藤義龍像」は、ともに国指定重要文化財となっている。このほかにも、道三と義龍の位牌や供養塔が納められている。毎年4月の第一土曜に開催される「道三まつり」と合わせて、常在寺では「斎藤道三公追悼式」が営まれ、この2日間は無料で拝観できる(通常は大人150円、小人100円)。

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