愛知県内の茶の湯巡り、お楽しみいただけただろうか。旅を通じて「茶の湯」の醍醐味を少しでも味わっていただけたら嬉しい。
ライターの私も、茶道を何年も習っていると、「そんなに長い間、何を学ぶの?」とよく質問されるようになる。確かに、お茶さえ点てられれば、最低限客をもてなすことはできるだろう。でもそれは、言葉の通じない相手と、簡単な挨拶をする程度のこと。それ以上のもてなしをするには、相手の言語や文化を学ぶ必要がある。茶道においては、それが所作をはじめ、道具やその合わせ方、そして空間のしつらえ方などにあたる。これらを学ぶほど、もてなす相手との会話が広がり、そこに喜びがある。お茶は、茶室という空間を通した、亭主と客のコミュニケーションなのだ。
そして、道具やしつらえを学ぶということは、生産地や工芸品、その時々の季節に目を向けるということ。「茶の湯」を軸にして、旅先で陶磁器を見たり、詩を読んだり、道端に咲く野花を見つけたりするなどの楽しみもある。「この花入に椿を生けたら…?」や「この茶碗の模様は海っぽいから、夏に使いたいな」と、イメージを膨らませるだけでなかなか胸ときめくものだ。
一方で、「お茶を点てる」という一番ベーシックな行為にも、頭の中をリセットする効果があるように思う。たった10分間、静かにお抹茶を点てていただくだけで、身も心もシャキッとリフレッシュする。カフェインと糖分を摂取しているのだから当然かもしれないが、お茶を点てる所作に集中することで、ほんのひととき、日々の喧騒から離れることができるのだ。
このように、茶の湯の楽しみは、少し意識すればいくらでも日常のなかにある。まずは、西尾の抹茶を家で点ててみるのもいいかもしれない。その一服に、ほんの少しの非日常を感じられるかもしれないから。