現在全国に120箇所ある伝建地区のなかでも、当時の建物が日々の生活で現在も使用されているのが増田の大きな特徴だ。さらに、この通りでは当主が自ら建物内を案内してくれる家も少なくない。寒さや湿気など現代の住まいに比べれば不便なこともある暮らしだが、増田の人々は祖先の残した蔵を大切に後世に伝えることに誇りを持っているように見える。増田の暮らしには、今でも歴史が脈々と息づいているのだ。

増田町には50あまりの内蔵が確認されており、外蔵を入れると100を超えるといわれている。古いもので築200年を超える建物群が現存するのは、豪雪地帯ならではの建築様式である「鞘建物(さやたてもの)」によって蔵が守られたことと、当時の職人技術の高さ、そして増田の商人たちの経済力を示している。

増田の蔵が特別なのは、今でも日々の生活で使われているという点だ。当主自らが蔵を案内し、生まれ育った我が家でエピソードを語ってくれる町は、非常に珍しい。蔵一つひとつがまるで家族のアルバムのように、家族の数だけ、蔵での思い出があるのである。その語りを聞くと、にわかに歴史が物語のように彩りを帯び、生き生きと動き出すように感じられるのではないだろうか。私たちが増田の蔵を歩きながら感じる、どこか懐かしいような心持ちは、きっとこうした町の人々の思い出と自分自身の思い出が、どこかで重なるからなのかもしれない。

「公開中」の看板がある蔵は見学可能。当主や家族の話に耳を傾けながら、在りし日の増田の姿に思いを馳せてはいかがだろう。

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