「……そろそろ、あの日がやってくるな。」

ずいぶんと日の長くなった空を見上げて、とある縄文人は「去年のあの日」を思い出す。そうして空を眺めていたのは彼一人だけではなかった。各地に散っていた縄文人が一斉に同じ日のことを思い出していた。

──夏至の日を前に、お祭りの準備をする先発隊が「約束の場所」にやってくる。昨年と同じ穴に柱をさして手ばやく建物を建てると、お祭りで振る舞う食べ物や、お祭りで使う道具を準備したりと忙しい。そして、いよいよ夏至の日がやってくる。
当日の朝、各地に散らばっていた縄文人が続々と集まってくる。しかも、それぞれがとても大きな緑色の石を抱えている。しきたりとして引きずって運んではいけないことになっているのか、男たちは汗を光らせながら重たい石を運んでいく。そうして、やっとの思いでストーンサークルに辿り着き、決められた場所に今年の石を置いていく。

「だいぶ丸い形になってきたな」

満足気に汗をぬぐう男たちの隣でパリン!パリン!と女性たちが土偶を割って地面にばら撒いていく。そして、あらためてストーンサークルを通して脈々と受け継がれてきた祖先の墓に祈りを捧げる。

その間にも続々と各地から縄文人が集まってくる。ある人は大きくなった子どもを見ながら笑みを交わし、またある人は親しかった友人の訃報を聞いて涙する。そうして、みんなが揃ったところでストーンサークルを舞台に盛大な宴会がはじまる。この日のために用意した果実酒も振る舞われ、日も明るいうちから大盛況。なんと言ってもこの日は一年でいちばん日が長い。つまり、年々寒くなっていく世界の中で、いちばん太陽の恵みを感じられる日なのだ。

しかし、夕方になると賑やかだったストーンサークルがふと静けさに包まれる。夏至の日の太陽が沈むにつれて日時計型組石の立石の影が長く伸びていく。そして、夕日が山並みに消えていくその瞬間に奇跡が起きる。山頂がパッと放射状に光り輝くダイヤモンドフラッシュが見られるのだ。その光景に無言で涙する人もいれば、小さく歓声をあげる若者もいる。小さな子どもも何か不思議な力を感じたのか母親の服を引っ張っている。

やがて夜になり、モニュメントに火をつけたところで宴を再会。賑やかなお祭りは夜通し続く。ストーンサークルは劇場と化して出し物が披露されたり、歌やダンスが行われたり。その様子はストーンサークルに眠るご先祖様も見守っていることだろう。そして、夜が明けるころに長老が解散の挨拶をする。

「これから実り多い季節がはじまる。みんなで今年も生き抜こう。そして、また来年にこの場所で会おう。」

その声に大きな歓声があがり、再び縄文人はそれぞれの地に帰っていくのであった。


──これは、ON THE TRIP メンバーの想像にすぎない。夏至の日にこの場所で何が行われていたのか、あなたも自由に想像をふくらませてほしい。

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