ハタハタは、秋田の食には欠かせない魚だ。もちろん、ナマハゲをもてなすお膳にもハタハタ料理が使われる。普段は水深250mの深い海に生息しているハタハタだが、産卵の時期である冬の間だけ、ごく浅い岩場までやってくる。冬の間のハタハタ漁が、うまくすると一年の稼ぎとなった。当たり前のように大量に捕れるため、かつて男鹿の人にとってハタハタは、漁師から買うものではなく「もらうもの」という感覚であったようだ。最盛期には2万トンもの漁獲量を誇ったが、1991年(平成3年)には、わずか70トンまで激減してしまった。3年間の全面禁漁を経て、現在では漁獲枠を設定し、資源の確保に努めながら漁を続けている。

男鹿は、水産物の豊かな土地だ。ズワイガニや鮭、ボタン海老やアンコウまで水揚げされるが、秋田県内に住む人にも、その豊かさはまだあまり知られていない。男鹿の人々にとって、豊かな水産資源はあまりにも当たり前のことで、広く知らしめようとは思い至らなかったのかもしれない。地元の食材をメインに扱うオガーレでは、どこよりも早く新鮮な水産物が店頭に並ぶ。新たな市場が生まれ、オガーレだけでも年間300万から500万円もの売上を達成する漁師も現れてきた。少し前まで、漁師の一年売上といえば、150万から250万円くらいが相場だった。漁業で稼げるとなれば、仕事を求めて男鹿から離れていった若者たちも、故郷で働こうと思うかもしれない。

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