この音は何をしている音だろうか? その答えを明かす前に、箱根の代表的な工芸品である箱根寄木細工の歴史を振り返ろう。

寄木細工の歴史は、江戸時代まで遡る。もともと箱根の山は自然豊かで、今もたくさんの種類の木が生えている。1000年ほど前より、その豊富な木材を目当てに、いろいろな技術を持つ職人が箱根に集まってくるようになった。

当初は主にお椀などの丸い器が作られていたそうだが、今から200年ほど前の江戸時代に、石川仁兵衛というひとりの職人が、色や木目が異なる木材を組み合わせて板を作り、それを薄く削るという技術を編み出した。そのごく薄い板を小箱などにノリで貼り付けたものが、寄木細工である。冒頭の音は、この寄木をカンナで削る音。石川仁兵衛は、江戸幕府が東海道を整備するために敷いた石畳を見て思いついたという言い伝えがあるそうだ。

考案者の石川仁兵衛は、小田原と芦ノ湖のちょうど真ん中ほどにある宿場町・畑宿にいたため、寄せ木細工は畑宿で発展した。畑宿は東海道を往来する人たちでにぎわっていたため、土産物として人気になり、その技術も発展。明治時代には、より複雑な幾何学模様の寄木細工が生まれ、現代も進化し続けている。

寄木細工は小物入れに多く使われていて、代表的な存在が「秘密箱」。決められた手順を踏まないと開けられない仕掛けになっていて、多いものだとひとつの箱を開けるための手数が100を超えるものもあるという。

そのルーツは、江戸時代の旅人が持って歩いた箱枕と言われている。寝ている時に貴重なものが奪われないように、旅人たちは簡単には開かないよう仕掛けが施された箱型の枕で寝た。その箱枕をモチーフに作られたのが、秘密箱だ。果たして、あなたはその箱を開くことができるのか。ぜひトライしてみてほしい。

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