湯本の源泉は、長い間、湯場熊野神社下から湧き出ているものひとつきりだった。しかし、明治に入り、交通網の整備などによって新しい首都・東京からの往来も便利になると、保養地としてさらに注目を集めるようになった箱根には多くの観光客が訪れるようになり、新たな源泉を求めて開発が始まった。その最初の頃に行われたのが、背後の湯坂山山麓の岩盤の割れ目から湧き出してくる温泉を横に掘削したもので、「横穴式源泉」と呼ばれた。当時の人たちは手作業で掘り進め、穴を広げて温泉を確保したそうだ。その温泉を浴槽に引き込んで利用した。