毎年、旧暦8月のある日に、節を新たにするという意味の新節=アラセツ行事がおこなわれる。

その長い一日は「ショチョガマ」からはじまる。早朝5時、夜明け前から集落の男たちが集まり、あらかじめ作っておいた「大きな片屋根の小屋」を倒す。この小屋のことを「ショチョガマ」と呼び、まさに、100人乗っても大丈夫。男たちが屋根の上に乗り、祝詞をあげると、みんなで歌いながら小屋をゆする。それも、ぐらんぐらんに揺らして小屋を倒すのだ。とりわけ南に倒れると豊作といわれ、みんなで右足に力をこめる。稲の神様に感謝すると同時に、次の実りを祈願する祭りであるという。その心はこの場所に立つとよくわかる。ここから見ると、広い田んぼの全体が見渡せるのだから。

昔はこのあたりの3つの集落で同時にショチョガマがおこなわれていて、その様子もここから一望できたという。どの集落も苦労して建てたショチョガマだから、もったいぶって、太鼓でじらす。昔は力のある若者がたくさんいたので一気に倒そうと思えば倒せたのだが、ギリギリまで持ちこたえさせながら、日が昇るその瞬間と絶妙にタイミングを合わせて競い合っていたとか。

ここで耳をすませてほしいのはショチョガマを倒すときに「ヨラ・メラ」と叫ぶその言葉。由来はわかっていないが、「ヨラ・メラ」と叫ぶと、不思議とリズムがあう。とはいえ、ショチョガマの最前列に立つ人はかなりの恐怖を覚えるはずだ。この狭い土地いっぱいにショチョガマを建てるので、下手したら小屋が倒れた勢いで崖下に放り出されてしまうかもしれない。でも、ショチョガマに参加する男たちは気にしない。というか、血がたぎる太鼓のリズムに乗って叫んでいるうちに「ショチョガマを倒した瞬間の記憶はない」というほど、ぶっ飛んでいるらしいのだ。こればかりは参加しないとわからない。ぜひ、あなたも本物のショチョガマを体感してみてほしい。

〜秋名こぼれ話〜

「ヨラ・メラ」の由来はわかっていないが、噂では「男(マラ?)と女(メラ)」という説も。田んぼの実りと生命の神秘を祈り重ねていたと考えられなくはないが、どうだろう。

ちなみにショチョガマの由来は新節の「節ガマ」ではないかという説がある。では、ガマはなにかというと崖にあるような「横穴」のこと。片屋根の小屋がそのように見えるからかわからないが、もうひとつ。ガマには「戯れ」という意味もあるそうな。昔は、若い男たちだけがショチョガマに乗って倒していたというから、若者たちの戯れ遊びという意味合いもあったのかもしれない。いずれにせよ、確かな由来はわからない。

Next Contents

Select language