部屋の扉を開けると、そこには深夜の街が広がっている。自由気ままに発展してきたこの街には、意図しない連鎖で生まれた路地や空間が多く存在する。その隙間を使って器用に自分の場所とし、眠る人、居座る人。そんな様子を時折、見かけることもあるのではないだろうか。
建築家でもあるアーティストの岩村寛人(いわむら・かんと)は、街の中のあらゆる隙間が人の居場所=「巣」になりうるのではないかと考え、都市の隙間をこの部屋で再現した。東京やロンドンで暮らす中で見た光景が、この空間に影響を与えているのかもしれない。
ロフト構造のベッドを取り巻く空間には、街灯がゆらめく。工事現場のように、上へ伸びる鉄パイプ。ベッドの下の隙間に潜り込んだら、そこはあなただけの秘密基地だ。ひんやりとしたコンクリートを感じながらごろんと寝っ転がれば、まるで路上で寝ているかのような感覚を味わうことができるだろう。
照明をつけたり、消したり。コンクリート色の三角のクッションを、好きな場所に置いてみてもいい。街の公園に自分だけの巣をつくるように、この薄暗い街の中であなたの場所をつくれば良いのだ。
多くの鳥は一度使った巣には、戻ってこない。それはちょうど大都会が、一過性の楽しみを感じる場所であるように。今宵、街の隙間に巣づくりをして過ごし、「どこで寝ようか」「何をしようか」と想像を膨らませて楽しんでほしい。