この部屋は、あなたがゆったりと旅の疲れを癒やすホテルの一室でもあり、美しく無駄のない造形物を展示する美術館でもある。

建築家である元木大輔(もとぎ・だいすけ)は、一般的なホテルの機能を残したまま、美術館さながらの非日常体験ができる部屋をつくりだした。 部屋はホワイトキューブの展示室。また、室内にあるすべてが抽象絵画であると捉え直し、空間を再構成したのだ。

この部屋の壁に掲げられている作品をよく見てほしい。一見展示物に見えるそれらは、テーブル天板・脚・鏡・抱き枕・トレイなどすべて機能を持ったオリジナルの家具なのだ。それぞれフレーム状に折り畳まれて展示されている。試しにテーブルの脚を壁から下ろし、天板を取り付けてみよう。少し重いので下ろすときは、十分に注意してほしい。

ベッドの頭上に埋め込まれているのは、黒い抱き枕。壁から外し、思いつくまま、オブジェのように重ねてみてもいい。もちろん寝る時に、抱き枕として利用することも可能。床面を大きく占める巨大なベッドに横たわりながら、アート体験を存分に味わおう。

ホテルという場を生かした、究極のミニマリズムの世界。ものの本質を捉え、利用者の行動に沿ったプロダクトを提案しつづける建築家だからこそ、表現できる世界がここにある。

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