美しい夕景が見えるモーテル、昭和日本の民家、風呂場、クラブ、美術館…。アーティスト・BIEN (ビエン)がイメージした世界の中に存在する、いくつもの部屋の壁。コラージュのように並んだ様々な種類の壁の中には、扉や窓がついているものもある。調度品は古いモーテルをモチーフに選ばれたビンテージでまとめられ、不思議な統一感を生み出している。

プロジェクトの初期、大きな空間を区切って個室をつくる工程で、彼は “壁”の存在に着目した。そして「部屋とは、壁によってつくられたある種のフィクションである」と捉えたのだ。

それぞれの世界の壁をながめていると、リアルとフィクションが混同してしまいそうになるが、その表面を削り、ベニア素材をあらわにする虫食い曲線の痕跡、むき出しにされた下地などがこの空間がフィクションであるということを暴き出している。

ベッドの脇にブラインドがある。そのブラインドを上げるとむき出しのコンクリートが目に映り、フィクションの向こう側をまざまざと感じることになる。「部屋とは、壁によってつくられたある種のフィクションである」。そう捉えたアーティストの思考を知るすべになるのではないだろうか。また、縦横無尽に描かれた虫食いの曲線の痕跡にも注目してほしい。あなたには、この痕跡が何に見えるだろうか。

むき出しのコンクリートの壁の上に、簡単に壁はつくられ、フィクションの世界がつくられていく。まるで舞台のセットの中で過ごすように、リアルとフィクションを行ったりきたりしながら、時間を過ごしてほしい。これまでにない、ユニークな体験があなたを待っている。

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