際立つ苦みに「ビールの魂」を感じる

特有の香りや苦みがあり、泡立ちや防腐効果にも優れるホップは「ビールの魂」と呼ばれている。しかし、そのホップが本格的に使われるようになったのは比較的最近のこと。5000年以上と言われるビールの歴史の中では、長い間ホップではなく「グルート」と呼ばれる薬草を配合したものが主流だった。それが14世紀ごろからホップの味や耐久性の良さが認められ、次第に置き替わっていったという。いわばこの時、ビールに魂が宿ったのだ。

ちなみに、そのホップをたくさん使って造ったのが「IPA(インディアンペールエール)」。これはかつてイギリスから東インド会社へ船でビールを運ぶ間、腐敗しないようにホップを大量に入れたことがはじまり。苦みの強いその味わいは、クラフトビールの中でも人気のスタイルだ。

fat barley brewingの看板ビール「Muddy hop juice」は、ホップをとにかく大量に使ったクラフトビール。芳醇な香りと飲み進めるごとに際立つ苦みで、「ビールの魂」を存分に感じてほしい。

「Muddy hop juice」が注がれたグラスは、向こう側が見通せないほど濁っている。ビールは透き通ったものという印象がある人は驚くかもしれないが、これはHazy IPAという近年人気のスタイルのビール。ホップの成分やモルトのタンパク質が溶け出して、独特な濁りを作り出している。

fat barley brewingのオーナーは、研修で訪ねたオレゴン州ポートランドにある醸造所Labrewatoryで、現地のブルワーと作ったBig In JapanというHazy IPAに衝撃を受けたという。それから「他にないくらい、ホップを贅沢に使ったビールを造りたい」という思いで、Muddy hop juiceを生み出した。

このビールが飲めるのは、fat barley brewingと同じ羽村市内にある直営のブリティッシュパブ、Ashford Craft Beer Pub。タップから注いでくれたスタッフも「Muddy hop juiceはfat barley brewingのどのビールよりもホップをたくさん使っています」と太鼓判を押す。

記憶に残るビールを生み出したオーナーだが、現状に満足しているわけではない。「Big In JapanのようなおいしいHazy IPAが造りたいと思って試行錯誤していますが、まだまだですね。でも、これからもっとおいしいビールを造れるはずです」。fat barley brewingの未来も、Hazy IPAのように先が見通せない。でも、だから面白い。

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