森の中で道がふたつに分かれていた。そこで私はあまり人の通らない方の道を選んだ。すると、そこにはまったく別の世界があったーー
太陽の光が熱海の海を美しい錦織のように輝かせる。少年は遠足でこの場所を訪れたとき、その美しさに感動した。それから戦争がはじまり徴兵されるも出撃前に終戦。すべてを失った青年は再びこの場所を訪れた。そして、変わらぬ水の美しさに勇気づけられた。その後、熱海で借金をしながら商店をはじめた彼は一年で借金の15倍を稼ぐようになる。やがて旅館を営むようになった彼が再び将来に思い悩んでいたある日。そんなときはと、この場所を訪れてみると、変わり果てた光景を目の当たりにする。美しかったはずの海が不法投棄などで荒れ果てていたのだ。それからすべてを投げ売ってこの土地を手に入れた彼は10年をかけて整備。ホテルニューアカオを開業する。
海の上に建つその建物は、岩盤と岸壁に数万のピアノ線を打ち込んでつながっている。景観を壊さないよう電柱を地下に埋めたことをふくめ、誰もやったことがない、国を巻き込んでの一大事業だった。ホテルの下に砂浜を作ろうとして一晩で波にぜんぶ持っていかれたり、イルカを飼おうとして逃げられこともあったというが、失敗を恐れずに突き進んだ彼は「赤尾蔵之助」として「人の通りにくい道を進む」という言葉とともに後世に名を残すことになる。
ホテルニューアカオとこの場所から見える風景は表裏一体であるわけだが、自分にとって原点となる風景とはなんだろう。そんなことを考えさせられる美しい海が今日も広がっている。
小松千倫
"Endless Summer"
中村壮志
“回帰”
保良雄
“Fruiting body”
松田将英
"Final Answer"