甲冑を身につけた姫の肖像

松代藩初代藩主、真田信之。その妻である小松姫を祀っているのが大英寺だ。この寺に残っている小松姫の肖像は、少し変わった姿をしている。六文銭の甲冑を身につけ、その上に徳川の家紋が描かれた陣羽織りを着ているのだ。なぜ、こんな女武者の姿をしているのだろう。

それは兄の信之が東軍に、弟の幸村と父親が西軍に、と袂を分けた逸話に関係がある。この別れのあと、父親は最後に孫の姿を一目見たいと、信之の城へと立ち寄った。しかし城を守っていた小松姫は、「敵味方となった以上、誰であっても門を開けるわけには参りませぬ!」と、城には一歩も入れさせなかった。そして小松姫は、薙刀を持って立ちはだかったという。

「武士の妻とはこうあるべきだ。これで何も心配はない」。父親はそう言って兵を引き上げ、城に入らない代わりに、一晩だけ城下町へ泊めさせてもらうことを願い出る。この願いを聞き入れた小松姫はその夜、自分の子を連れて城下町に現れたという。孫の顔を見たいという願いを叶えたのだ。

勇敢で優しかった小松姫。その人柄を想像しながら、ぜひ肖像を目にしてほしい。

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