戸隠で一番水が豊かな場所

宿坊や旅館、土産物屋が立ち並び、食事時にはそば屋がにぎわう。観光地らしい雰囲気の中社エリアは、戸隠でもっとも水が豊かな場所だ。それを象徴するのが、中社社殿の脇にあるさざれ滝。飯縄山の地層でろ過された湧水を水源としていて、戸隠生まれのある人は「この水で戸隠は支えられている」と話す。どういうことだろうか。

一つは、この付近にあるそば屋のこと。そばを茹でるには大量の水が必要だが、何軒ものそば屋が昼時に一度に使っても、豊富な水は涸れることがない。地層による天然のろ過機能を通して流れ出た冷たい水は、そばの味を引き立てる。奥社の付近にあるそば屋も、中社の水を使っているほどだ。そうしないと、そばの味が変わってしまうのだという。

もう一つは、この水を長野市街地への上水道として供給していること。水の権利を持っていることは、近代にこの地域の経済を支えることにもつながった。この二つの意味で、戸隠は「水」によって支えられているのだ。ちなみに、中社の手水舎の水は、少しなら汲んで持って帰ることもできる。この先の奥社まではまだ距離がある。この水で喉を潤しながら行くのもいいだろう。

中社に祀られている祭神は、オモイカネ(天八意思兼命)。天の岩戸伝説で「岩戸の前で大騒ぎをすれば、アマテラスが顔をだすのではないか」とアイデアを出した神様で、知恵を司っている。

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