日本ならではの「かな文字」。しかし、かな文字と言っても、現在の日本人が使っている「平仮名」は明治時代に定められたもの。その歴史は飛鳥時代や奈良時代の「万葉仮名」にまでさかのぼることができる。それだけ長い歴史があるゆえに現代の日本人では判別できない「かな文字」がほとんどであるが、作品のタイトルでもある「生ふる」とは日本の古語で「生える、伸び育つ」という意味がある。「変わらずにいる」ことが難しい時代であるが、いにしえの言葉は今日に生きている。それが断片的なものだとしても、かき集め、書き続けることで、絶えずに残り続ける言葉があるのかもしれない。作者はそんな想いでこの書を壁に刻んだという。