瀬戸内の空気を作品に乗せて

障子戸から差す柔らかな光が空間を包む二階。ここで最初に出会うアーチ状の大きな作品は、およそ4,000羽の鶴によって構成されている。この美術館に置かれている作品は、初めて小豆島を訪れたときに感じた「透明感」が表現されている。

ここからは小野川氏自身に語ってもらおう。

「フェリーに乗って島に向かう時間の中で、東京から抱えてきたもやもやしたものが取り払われるような気がしています。海に浮かぶ島々や水平線から感じる透明感、そのような感覚を作品に落とし込みます。東京で作った作品はやはり、ヴィヴィットな色が多く瀬戸内での展示にはあまり向かないのではないかと思いました。ですからここで展示してある作品は白を基調とした、やわらかい色や曲線で構成しています。ぜひ皆さんにも、ここ瀬戸内の透明な感覚というものを作品を通して感じて頂ければと思います」

思いを込めたものには「なにか」が宿る

日本には「八百万の精神」が受け継がれている。古代から日本人は見えないものの存在を信じてきた。100年以上使う道具や楽器などには「付喪神(つくもがみ)」が宿ると言われ、今なお、森や木や石に神様を見出し、大切に祀っている。ここ小豆島にも、自然信仰の名残がそこかしこに残されている。

「折り鶴はどこか尊く、また神秘的な「なにか」がひそんでいる様に感じます。そして、それはまた、私の信じている「美しさ」でありました。きっと見る人、ひとりひとりが自分なりの「折り鶴」との歩みを持っています。その中でどのように感じてどのように思いを重ねるかはそれぞれですが、作品との対話を通し、心を揺さぶる「なにか」が生まれることを願っています」

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