私はこの⻑期プロジェクト「Alive」を、私自身の家族の記憶から始めました。そこからカンボジア国内に住む他の家族、そして紛争後に祖国を離れて世界各地で暮らすカンボジア人・ディアスポラ(移民)にも、このプロジェクトを広げて人類の歴史を記憶していくことにしました。

そして今、生きた証人は徐々に姿を消し、時間との戦いになっています。クメール・ルージュの戦争から40 年経ち、当時を知る人々も高齢になり、残された時間も少なくなってきました。戦争を体験した証人が記録されないまま亡くなってしまえば、その記憶は失われてしまいます。過去から学ばなければ私たちは過ちを繰り返すことにな り、これはカンボジア人だけでなく、全人類にとって重要なことだと考えます。

私の写真に登場するモノの多くは、戦前、クメール・ルージュ政権時代、国境のキャンプで家族によって使われ、その後、犠牲者や生存者と共に新しい土地へ⻑い旅をして日用品として使われ続けてきたものです。それぞれの写真には、個々のモノにまつわる真実の物語につながるヒントが隠されています。ポル・ポト時代の後、汚れた土地から掘り起こされ、再生され、あるいは、家族の生涯を通じて保管されてきたモノなのです。

写真やモノはすべて、深い意味をもっています。それらは、歴史の中の過去の時間の証拠です。戦争は犠牲者を殺すことは出来ても、生き残った人々の記憶を殺すことはできないのです。記憶は、現代に生きる人々の意識の中で生き続け、知られ、共有されるべきであり、次の世代のために遺産を保存する必要があるのです。

―キム・ハク―

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